The Cat Office: 宮沢賢治の「猫の事務省」
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The Cat Office: 宮沢賢治の「猫の事務省」

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宮沢賢治の短編小説「猫の事務省」(1926)は猫の歴史と地理を調べてくれる猫の事務省の話です。黒い繻子(しゅす)の服を着て、字のうまく詩の読める四匹しか選ばないので、とても尊敬される職場です。しかしある日、こんなに上品な所に、窯猫(かまねこ)が書記に入ることになります。他の猫達は煤(すす)があちこちついて汚い窯猫が一緒にあるのも嫌いなのに、窯猫が自分達より優秀だということを知ってからは憎くてたまりません。窯猫が何をしてもわざと歪曲(わいきょく)して非難しながら責め立てます。結局、この状況にきずいたいかめしい獅子(しし)によって、事務省は解散ということになります。

自分達が自慢していた社会的な地位を自分達より「足りない」ものが共有して、しかも実はもっと「立派だ」ということを知ったらどうなるでしょう。この物語の猫も私も他の人々も、猫を被(かぶ)ることをやめて、嫉妬と不安と憎みに陥(おちい)り易いですね。泣いたり怒ったりする猫達を想像しながら読むのはとても楽しかったのですが、物語に映っている人間の卑劣性には寂しくなりました。

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